NHK記者からPR会社の執行役員、大学講師まで、多様な経歴を持つ
―尾上さんの簡単な経歴を教えてください。
尾上:に国会議員秘書を務めたのち、新卒でNHKに入局しました。NHKでは記者として、ニュース原稿を出稿し、記者リポートや特集、スペシャル番組の制作などを担当しました。前職の井之上パブリックリレーションズでは、16年にわたり、コーポレートPRの領域を中心に、PRコンサルティングや危機管理、ロビイングなどの業務に従事していたほか、執行役員として経営改革や事業推進にあたっていました。
PRパーソンの市場価値を高めるためにできること
―マテリアルに取締役として参画された背景を教えてください。
青﨑:実は、尾上さんとは足掛け3年ほど、PR業界全般についての意見交換の場をもってきました。今回ご縁があって、取締役として参画いただくことができ、社内外から“サプライズニュース”として多くの反響をいただきましたが、お互いに時間をかけて信頼関係を構築したうえでの決断でした。話し合いを重ねていたテーマは、「PR業界・PRパーソンの市場価値を上げていかなくてはならない」という共通の課題です。まさに尾上さんは、この課題を正面から乗り越えられるケイパビリティを有する人材だと思っています。マテリアルという同じ船に乗りながら、PR業界全体に対してもオーナーシップを持ち、この課題に向き合ってもらえると嬉しいな、と考えていました。
尾上:そうですね。青﨑さんとは3年以上、折に触れ「PR業界をどう変革していきたいか」の議論を交わしてきましたが、コロナ禍で激変する市場環境などに触れつつ「お互いに大変ですね」といった情報交換もしてきました。その後、世の中が落ち着いた頃にあらためてお会いし、PR業界の未来について意見交換をしているなかで、青﨑さんから「尾上さんがマテリアルに参画したときの構想を一度ぜひプレゼンさせてください」と誘っていただきました。新しい取り組みにチャレンジしたいといった自身の想いもあり、「もし参画させていただくとしたら…」と具体的なお話を進めていきましたね。
自分の力を最も必要としてくれていると感じたことが決断の理由
―マテリアルへの参画以外にはどういった選択肢がありましたか?
尾上:これまでの人生で自分が経験できていないことがまだまだあると感じていたので、海外のPR会社でのキャリアや、優先度は低かったですが、自身での起業なども考えていました。お話をいただいたマテリアルでの構想は、新しいチャレンジが沢山あるという意味で、他の選択肢を超える魅力があったのはもちろんですが、なによりも、“自分の力を最も必要としてくれている”と感じたことが決断に至った理由として非常に大きかったです。
―参画の決め手は、「最も必要とされている」だったんですね。
尾上:そうですね。あとは、青﨑さんの熱意と真っ直ぐな瞳といいますか(笑)。PR会社としてのビジョン・目標をしっかりと宣言して、着実に歩みを進める姿勢やエネルギーをひしひしと感じていましたし、青﨑さんやマテリアルの経営陣の皆さんが語る言葉は決して表層的に取り繕ったものではないと確信しました。また、経営陣が情勢変化に適切に対応し、経営に誠実に向き合おうとしている様子にも惹かれましたね。これまでお互いに見てきた業種やコンサルティングの手法が違ったからか、PR業界の先輩方からは「マテリアルと尾上さんの組み合わせは意外だった」と驚かれましたが、振り返ってみると、ある意味、決断することができて良かったと思います。
青﨑:ありがとうございます(笑)。初めてお会いする時は、業界内でも有名な方非常に緊張していましたし、「舐められたらダメだ」という虚勢もあったかもしれません。しかし、実際にお会いしてみると、柔らかい物腰とその傾聴力のおかげで、なにひとつ飾ることなく、思いの丈をお伝えして業界の未来について話すことができました。テクニカルな意味ではなく、尾上さんはひとりの人間として、“出来た人”だと素直に感じましたね。
―そんな青﨑さんの姿を見て、マテリアルに対しての印象の変化はありましか?
尾上:ここ数年、マテリアルはPR業界のなかでも、「最近、謎に伸びている会社」という噂がありました(笑)。日本PR協会が主催するPR業経営者懇談会でも、「徹底した営業活動でものすごい業績を上げているらしい。実際にマテリアルの社長にお越しいただいて、話を聞かせてもらおう」とこうした印象から、当時は前のめりでイケイケな会社なんだろうというイメージを持っていましたが、実際代表の青﨑さんにお会いしてみると、真っ直ぐで誠実な社長だから成果を出し続けられるんだろうと感じました。社員だけでなく、経営陣も若い方が多いですよね。経営や事業の発想が若く、問題意識の共有や課題解決の手法においても、同じ目線で会話ができそうな点が面白いと感じていました。
コーポレートPRとマーケティングPRを組み合わせる価値を感じてほしい
―尾上さんの参画と同時に立ち上げた「コミュニケーションコンサルティングユニット(CCU)」の事業内容について教えてください。
尾上:マーケティングPRのサービスを中心に顧客の評価を得てきたマテリアルが、これまで提供サービスとして大々的に掲げていなかったコーポレートPR領域のサービスをマテリアル社内の各部門と連携しながら提供しています。今後も、社内外に声をかけ、関係者を広く巻き込みながら、業界を盛り上げていきたいと考えています。
PR業界のなかでも、コーポレートPRとマーケティングPRの両軸で、充実したPRサービスを提供できている会社は珍しいと思います。「コーポレートとマーケティングの両面で相談にのってくれるPR会社を探していた」という企業も多く、実際僕の転籍後すぐにお声がけいただいて、早速取り組みを始めている案件が複数あります。CCUという組織が上手く立ち上がったことで、マテリアルでは、幅広いPRサービスを提供できるようになっただけではなく、“総合的で統合的なパブリックリレーションズ”の実行支援が可能になりました。クライアントの皆さまにはぜひ、コーポレートPRとマーケティングPRを組み合わせた、真のパブリックリレーションズ”を探求する価値を感じていただきたいですね。
教育現場や日本PR協会での貢献が、花開いていく
―双方に期待していることはありますか?
青﨑:コーポレートPRとマーケティングPRのかけ合わせにこだわり、クライアントのご要望にお応えしていくことで、マテリアルは国内で唯一無二の存在になれると考えています。加えて、「PRパーソンの価値を高めていきたい」という話は、決してマテリアルだけを思って言っているわけではありません。早稲田大学や大東文化大学など複数の教育機関で教鞭を執っている尾上さんには、多くの教え子がいますが、PR業界やPRパーソンの価値を押し上げていくことを目指す際に、尾上さんがそのハブを担ってくれるのではと期待しています。政府機関のアドバイザーを務めたり、日本パブリックリレーションズ協会の複数の委員会で委員を務めるなどしてきた尾上さんがマテリアルの仲間になってくれたからこそ、さまざまなネットワークを活かして、PRパーソンの価値向上に大きく寄与することができる。これまで、大きな労力と多くの時間をかけて社会に貢献されてきたことが、花開く瞬間が必ずあると思っています。
PRパーソンにとって、「新しい起用のされ方」を考える
尾上:特に、大学で「パブリックリレーションズの奥深さや面白さ」を伝える講義をしていると、学生から「社会に出てPRの仕事をするにはどこを目指せばいいですか」と学びの出口について質問される機会が多くあります。実は青﨑さんとお会いする前から、マテリアルが、新卒採用を積極的に実施し、“人づくり”や“体制づくり”に力を入れていることを聞いていたのですが、毎年教え子を社会に送り出す立場としてひそかに感謝していましたし、業界全体にとって非常に意義深いことだと感心していました。PR業界のみんなで協力しながら、業界全体の価値向上を目指していきたいですし、PRパーソンの活躍の場を広げていきたいと考えています。起業や新規事業など、ゼロイチを創り出すタイミングでお声がかかったり、企業の社外取締役や政府機関のアドバイザーに就任したり、「PRパーソン」を「PRコンサルタント」に昇華させたような、これまでにない「新しい起用のされ方」を模索していきたいですよね。
青﨑:まさにそのとおりだと思います。尾上さんと一緒に「新しい起用のされ方」を目指していきたいと思っています。少しずつ、けれど着実に階段を登って、そんなところまでいけるんだ!という高みまで登りつめていきたいですね。
尾上:PRパーソン、PRコンサルタントが、色々な場面で、参謀として起用される世界を目指したいですね。コンサルティング業界の他のコンサルタント職とは異なり、ジャーナリスティックな視点やメディア発想で圧倒的に強いことは間違いありません。さまざまなクライアントの肝入り案件で、経営陣と対等に渡り合い、悩みや課題だけでなく、共に未来を語り合えるPR人材を生み出していきたいと強く思います。