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2022.April | 事例の裏側

「食品ロス」という社会課題の解決アクションを、日常の行動に取り入れる『B面レシピ』の挑戦とは?「新たな着眼点」から生まれたPR施策の裏側|パートナー対談

マテリアルマガジンをご覧の皆様、こんにちは。マテリアルグループ広報担当の時田です。

今回のマテリアルマガジンでは、電通 PRソリューション局の高橋 慧至さんをお招きして、マテリアル ブランドプロデュース1局(BP1局)の梶原 祐彰さん、川上 桃子さんとの対談を実施。多くの企業がSDGs/ESGへ取り組む中、ミツカンが始動した『B面レシピプロジェクト』への取り組みとその背景、そしてPR視点でのポイントについて語っていただきました。日々、「サステナブル」という社会テーマが取り沙汰される中、PR視点でのメッセージを盛り込んだ対談となっております。

1.『B面レシピプロジェクト』とは

通常のレシピによって余ってしまう食品を活用する“B面レシピ”

ーはじめに、高橋慧至さんの簡単な経歴について教えてください。

高橋:電通に入社したのは2010年で、そこから約3年間はクリエーティブ局に配属され、CMプランナーやコピーライターとして活動していました。その後、プロモーション局に異動となり、店頭販促やイベントの企画などを担当することになりました。現在は、 PRソリューション局で、さまざまなクライアントとのお仕事に携わっております。

 

ー『B面レシピプロジェクト』の取り組みの紹介について、簡単な概要を教えてください。

高橋:この『B面レシピプロジェクト』は、ミツカンの主力商品のひとつである『鍋つゆ』を起点として2021年から始動したプロジェクトで、社会課題とされている「食品ロス」に対して、生活者がより身近にアクションできるようにする取り組みです。料理の通常のレシピを“Aと捉えると、そのA面によって余ってしまう食材を使えるのが、“B面レシピ。まずは、ミツカンの主力商品であり、野菜を多く使う『鍋つゆ』という商品のパッケージ裏面にB面レシピを掲載して店頭で販売し、この取り組みを広げるという意味で、さまざまなPR活動を行いました。

 

自分ゴト化しにくいからこそ、誰もが目にする日常にヒントがある

ー今回、このプロジェクトに取り組むことになった背景はなんでしょうか?

高橋:ミツカンは、もともと食品メーカーとして、「食品ロス」という社会課題にどのように向き合うべきなのか模索しておられました。一見すると「食品ロス」は規模が大きく、意識の高い方々が取り組む課題であると思われがちです。このような、自分とは遠い問題に思えるという現状に対して、より多くの方に身近に実践してもらいたいという思いがありました。日常の中で、誰もが目にするところに解決するヒントがあるのではないかという背景や思いがありましたね。

2.「調査設計」と「産学官連携PR」で、「食品ロス」問題を広げていく

生活の中で見過ごされていた発見と「産学官連携PR」への挑戦

ーPRディレクターから見た、本プロジェクトのPRポイントについて教えてください。

高橋:ポイントは、大きくふたつあると考えています。ひとつは、「着眼点」とそれらを「可視化する調査」です。まず、今回の取り組みを行うにあたって、“普段の生活で見過ごされていた発見”に注目しました。実は、レシピの表記は、『白菜1/3個』のように“分数表記”が多い。つまり、レシピ通りに調理すると、必然的に食材が余る構造になってしまっていたんです。この点が、なかなか自分ゴト化できない社会課題に対しての身近な入り口となっていて、日常生活の中に簡単なアクションを取り込めるという意味でのポイントだと思います。さらに、この発見に注目を集めるため、調査からファクトを出して、顕在化させたこともポイントだといえます。実際の調査では、約4割の人が、レシピ通りに調理したことで、食材を余らせてしまったことが判明し、さらにそのうちの約8割以上がその食材を廃棄してしまったことなどが浮き彫りになりました。クリエイティブ領域では、こうした自分ゴト化しにくい社会課題に対して、ポップでチャーミングな表現で解決策を提示して、アウトプットしていきました。

 

 

ふたつめは、「産学官連携PR」です。ミツカンという食品メーカーが、「企業」の枠を超えてさまざまな領域の組織と協業できたことが大きなポイントだと思っています。生活者にとって身近な自分ゴト化を目指す上で、ミツカンというひとつのプレイヤーだけでなく、同じ志をもった多くのプレイヤーと共に取り組むことができたことが、食品ロス削減のアクションを広げるための手段としてはとても重要だと感じました。実際に、『ホクレン農業共同組合連合会(ホクレン)』『北海道庁』『藤女子大学』などと連携することができました。世の中に対して、それぞれが本気で取り組んでいるという意思を伝えることもできますし、生活者に対して、より多くの接点からアプローチできるようにもなります。

 

また、『藤女子大学 菊地ゼミ』の皆さまには、北海道の道産野菜である水菜などを使って、北海道らしいB面レシピを開発していただきました。マテリアルの皆さまと、PR施策をより広げていくためにできることや連携を考えながら、プロジェクトを“公のもの”にするため、さまざまなステークホルダーとの連携を進めていきましたね。

 

梶原:そうですね。最初の段階から、“B面レシピ”というワードが確定していたのですが、非常に的を射ており、 “B面レシピ”と聞くだけで、何が言いたいのか連想できる素晴らしいワードだと思いました。だからこそ、「ひとつの企業のプロモーション」という形で見えてしまうのは、非常にもったいない。さまざまなステークホルダーを巻き込みながら、ひとつの大きな傘として世の中に広まっていけば、より良いものになると確信していたので、色々な観点から「食品ロス」という社会問題が広がっていく取り組みにしていきたいと思っていました。

 

不確かな「調査設計」と「産学官連携PR」のハードル

ープロジェクトを進める上で困難だったことや、乗り越えたは何かありますか?

高橋:難しかったことは主にふたつあります。ひとつは、調査設計です。本プロジェクトに限らず、調査をする前の仮説立てが、どれだけ世の中に受け入れられるのか、という検証が非常に難しいと常々感じています。調査でファクトや課題を顕在化させる際に、どうしても担当者として当事者の意見になってしまうので、無意識的なバイアスがかかってしまうんです。客観的な視点で検証をおこなう必要があるからこそ、PR視点のプロフェッショナルであるマテリアルの皆さまには助けていただいたと思っています。世の中に出てみないと分からない、というのは不安要素でもありました。

 

ふたつめは、「産学官連携PR」の交渉です。主に、ミツカン様から交渉を進めていただきましたが、普段、マーケティングやPRの視点で活していない団体の方々に向けて、どのように説明することで納得してもらえるのか、賛同してもらえるのか、実際の交渉時に、どのような資料を作ってお渡しすればいいのかなど、慎重に考えなくてはいけませんでした。

 

梶原:その中でも、特に『北海道庁』や『ホクレン』との連携は難しいと感じました。この連携自体は良いものになると思っていましたが、不確定なイメージをお伝えすることになるので、伝え方は工夫しました。また、プロジェクトのローンチタイミングでは、北海道から「産学官連携PR」の施策をスタートさせたのですが、それらの情報を関東のメディアに露出させるという意味でも、地方の情報解禁からの波及に苦戦しました。結果として、『ライブニュースイットLive News イット!)』でも取り上げていただいてありがたかったです。

 

川上:私も調査設計は非常に難しいと感じました。主婦層の方々をメインに、何かしらの課題を抱えているだろうと予測していましたが、それらをどう可視化するのか、また、実際の数値が仮説よりも低く出てしまうのではないかと不安もありました。加えて、調査から得られた結果やファクトをどのようなインパクトを持たせて見せるのかなど、設計の段階から非常に難しい部分だったと思います。

 

高橋:今回の調査文脈が実際の記事の見出しや特集の導入として反映されることも多かったですよね。

 

梶原:実際には、主婦層以外の20代の若者層も日々、「食品ロス」を感じていたりと、予想以上の結果が見えましたよね。

 

“B面レシピ”というキーワードが持つ力と質の良い露出

ープロジェクトの反響はいかがでしたか?

高橋:メディア露出の点では、120件ほどのメディアに掲載していただくことができました。中でも、テレビは合計で44分間もオンエアしていただきました。一度に長尺で紹介されているんです。プロジェクトの背景や“B面レシピの価値について取り上げてもらうことができたので、質のいい露出だと言えます。また、ミツカンでは独自で事後調査を行っているのですが、「実際にこのプロジェクトに共感した」という方が約70%。さらに、60%は「生活に取り入れたい」という結果も出ています。意識面では、約74%の人が「食品ロス削減の意識が高まった」と回答していますが、その中でも、特に20代はスコアが高く、約83%が「意識が高まった」と回答されています。意識が高いといわれるZ世代の層にもコミュニケーションすることができた、という発見になりました。

 

また、社内でも、「B面レシピいいね!」と声をかけていただいて、次はどのような取り組みで広げられるのかと議論につながる機会もあるので、ポジティブな反響を実感しています。

 

梶原:プロモートした際のメディアの方の反応も、非常に良かったんです。なぜミツカンがこの取り組みを行うのかはもちろん、“B面レシピというワードが持つ課題や背景が整理されたプロジェクトでもあるので、世の中に求められていることを体現できた施策だったかなと思っています。また、ラジオでも取り上げてもらえたことは、かなり珍しいと思います。リリースをお送りした際に問い合わせをいただいてオンエアが確定した、初めての経験でした。

3.さいごに、パートナー企業として

マーケティング視点とPR視点をもつプロフェッショナル

ー高橋様からみて、PR会社に求めることはなんですか?

高橋:私が所属する広告代理店のPRセクションという立場では、企業や商品をマーケティングの観点から眺める視点と、世の中から眺めるPRの視点を融合させながら、課題を解決することがミッションになりますが、PR会社の皆さまには、PR視点のプロフェッショナルでいてほしいと思っています。どのように調査を設計すれば、世の中に受け入れられるのか、などの視点も含めて、PR視点を持って一緒に奔走してほしい。加えて、マーケティング視点からも眺めていただくと、両者が共通言語的に取り組むことができるので、パートナーとして非常に心強いなと思います。

 

ー今後目指していることや、挑戦したい取り組みがあれば教えてください。

高橋:さまざまな企業や団体の方々と、社会視点や社会課題起点でのプロジェクトを立ち上げていきたいと思っていますし、そうしたプロジェクトをより手掛けていきたいと思っています。商品やサービス起点ではなく、社会や世の中からモノゴトを見ることが増えたと感じているので、クライアントにも積極的に提案していきたいですね。

 

梶原:PR施策の中には、意識変容で留まってしまう施策もありますが、その先の行動変容までPRの領域でカバーしていけるようなプロジェクトを進めていきたいです。顕在化されていない課題のその先にアクションがある、という一気通貫した案件に携わっていきたいと思います。

 

川上:行動変容までを担うことのできる案件はなかなか難しいですが、そこに対してしっかり成果を出していきたいと思っています。

 

同じ志を持つ企業とともに推進していきたい

SDGsに取り組む他の企業・団体に向けてメッセージがあれば、お願いいたします!

高橋:このチームを代表してのコメントになってしまいますが、「食品ロス」という課題は、自分ゴト化されにくいにも関わらず、非常に大きな課題です。だからこそ、身近で簡単なアクション日々の生活にインストールしていけるアクション という視点において、“B面レシピは非常に価値があると感じます。いずれは、すべての料理に当たり前に“Bがついているような世界になれば素敵だなと思います。そのためには、ミツカンと同じような食品メーカー・飲食店も含めて、多様な企業とのコラボレーションも重要になってくると思うんです。各社が差別化してターゲットを奪い合うのではなく、同じ志をもつメーカーや企業が協力しながらターゲットを広げていく。そうしたことができるようなパートナーが現れてくれたら嬉しいと思っています。ご興味のある方がいれば、ぜひお問い合わせください!

 

梶原:昨今の話題に乗るためだけに、なんちゃってSDGs”を発信する場面も見られるようになりましたが、本気で解決に向けて動くような取り組みこそ、相当な時間と工数がかかることを実感しました。良い企業と言われるためだけにパフォーマンスするのではなく、このプロジェクトのように大きなパワーをもって推進していくことが非常に重要だと思います。

 

高橋:そうですね。色々な方に支えていただいて実現できたことだと思うので、これからもチームの熱量を高めていきながら、世の中に発信していきたいと思います。

 

梶原:引き続き、高橋さんと一緒にお仕事していきたいと思います!

※2022年4月時点の情報です。

マテリアルグループ広報 時田友里香
マテリアルグループ広報 時田友里香
マテリアル2018年入社の広報担当。好きな食べ物は羊羹。広報業務のほかMATERIAL MAGAZINEの執筆を担当しています。世の中のひとがもっともっとマテリアルグループを知って、好きになってもらえるよう日々勉強中。
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