MATERIAL MAGAZINE

2020.December | 事例の裏側

本田事務所とマテリアルで考える、これからのPRエージェンシーに求められる役割|PRアワード受賞記念インタビュー

マテリアルマガジンをご覧の皆様、こんにちは。マテリアル2018年入社広報担当の時田です。

2020年12月1日(火)に発表された「PRアワードグランプリ2020」にて、『味の素冷凍食品 冷凍餃子#手間抜き論争』が見事シルバーを受賞いたしました。

今回のマテリアルマガジンでは、シルバー受賞を記念して、企画立案およびディレクションを手掛けた本田事務所代表取締役・本田哲也氏と、コミュニケーション設計およびPRを努めたマテリアル・小沼未季の対談を実施。PRエージェンシーとしてクライアントと向き合う際に意識していることや、これからのPRパーソンに求められるスキルセットについて語っていただきました。

■対談者プロフィール

本田哲也:株式会社本田事務所・代表取締役/PRストラテジスト
「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。2006年ブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2019年より、株式会社本田事務所としての活動を開始。外務省のアドバイザーやJリーグのマーケティング委員などを歴任。海外での活動も多岐にわたり、世界最大の広告祭カンヌライオンズでは、公式スピーカーや審査員を務めている。

小沼未季:株式会社マテリアル・ブランドプロデュース局サブマネージャー
2018年5月マテリアルに中途入社。入社後はブランドプロデュース局にて、PRディレクターとして企業のPR・ブランディングの支援を実施。前職は、リクルートグループにて営業・企画部門に在籍。

 

『味の素冷凍食品 冷凍餃子#手間抜き論争』について

「夕食に冷凍餃子を出したところ、これは手抜きと夫に揶揄された」という、とある一般主婦の方のツイッター投稿を発端に、企業公式Twitterから「冷凍餃子を使うことは、手抜きではなく、手抜きである」と投稿。多くの反響を受けて、家庭の台所に代わって、工場で手間をかけて商品が作られていることを紹介したアンサー動画を公開。味の素冷凍食品が商品にかける想い対して、多くのステークホルダーからの共感を獲得した。

PRアワードで見事シルバーを受賞した『味の素冷凍食品 冷凍餃子#手間抜き論争』

「このまま終わらせないほうがいい」という思いからマテリアルに

はじめに、本田事務所さんがマテリアルとパートナー企業としてお仕事をするようになったきっかけを教えて下さい。

本田:昨年ブルーカレントから独立して本田事務所を立ち上げ、様々なPRエージェンシーとお仕事できるようになったタイミングで、改めてマテリアルさんとのお付き合いが始まりました。そこで、窓口としてご紹介いただいたのが、小沼さんでした。

小沼:そうですね。去年辺りからいくつかの案件をご一緒させていただくようになりました。

本田:今回の『手間抜き論争』については、Twitterが発端でした。多くの反響がある中、どうブランドに落としていくか。スピード感と、SNSの声を上手く活かすエグゼキューションをつくりたいと考えていました。そこで、“SNSを活かしたエグゼキューションが得意”という印象があったマテリアルさんに真っ先にお声がけさせてもらい、本田事務所とマテリアルさんでスピーディーに動ける体制を即座に作りました。

小沼:「1ヶ月以内に何かしらのアウトプットを!」というお話から始まりましたね。

 

『冷凍餃子#手間抜き論争』はまさに“パブリックリレーションズ”

この度は“シルバー受賞”おめでとうございます!今回の施策で大変だったことはありますか?

本田:『#手間抜き論争』はまさに、「これはパブリックリレーションズだ」と言える案件だったと思います。偶発的とも言える状態から始まり、いかに多くのステークホルダーを巻き込み、話題を大きくしていけるのかという、PRの醍醐味を実感できる案件でした。大変だった点は、クライアントも含めてとにかく“スピード重視”だったことです。特に動画制作においては、クライアントの「企業として伝えたいこと」と、エージェンシーの「PR視点として伝えたいこと」をどうリンクさせるかという点で議論になり、スピードを保ちながら合意形成を行うことにチャレンジがありましたね。

小沼:そうですね。まさに、“スピード重視”という点では、一緒に担当していた國井が主導で進行してくれましたが、判断の連続の中でスピーディーに動くことは大変だったと思います。

 

余白を残すPRのコミュニケーション

『#手間抜き論争』成功の秘訣はどこにあると思いますか?

本田:ひとつ挙げるとすると、「コミュニケーションの余白」です。伝えたいことを全て一方的に吐き出さずに、あえて生活者が解釈できる余地を残す。今回の施策で言うと、「SNS上で自由に感想を呟けるようにすること」もそのひとつです。

実は、「最後の仕上げは、あなたのフライパンで」という動画メッセージもこの発想を基に作られました。味の素冷凍食品が提供している冷凍餃子も、買った後に自分のフライパンで調理することが大事であり、それらは「Ready to Eat」ではなく「Ready to Cook」であるという企業の思いが込められています。「企業の思い」と「コミュニケーションの余白」を上手く掛け合わせたことで、「味の素さんと一緒に作っている感じがします」や「工場で手間を抜いてくれるから気軽に調理できるのですね」という声を中心とした多くの反響に繋がったのだと思います。

 

今年の「PRアワードグランプリ2020」ではゴールド受賞者がいない結果となりましたが、審査員として本田さんはどう感じていますか?

本田:今回のPRアワードにおいて特別だったことは、“ダブル・グランプリ”です。審査員が多くの議論を重ねた結果、どちらの施策も素晴らしいという結論になりました。両施策に共通して言えるのは、このコロナ禍で、その企業ができる最大限の社会貢献をスピーディーに行ったということ。企業にとっての営利を優先するのではなく、事業領域の中でできる最大限の対応を行った点が、今回のアワードで最も評価されたポイントです。


※PRアワード「ダブル・グランプリ」のご紹介はこちら

「“上手な換気の方法”を伝えたい!『空気で答えを出す会社』の底力」
(エントリー会社:ダイキン工業株式会社、事業主体:ダイキン工業株式会社)

「『新型コロナウイルスに関する危機管理広報初動マニュアル』無償提供でコロナ禍での本質的PR発想を最短最速で日本中に提供」
(エントリー会社:株式会社井之上パブリックリレーションズ、事業主体:株式会社井之上パブリックリレーションズ)

 

PRエージェンシーとしての向き合い方

不確実性の高いPRだからこそ、期待値コントロールが重要

普段クライアントと接する上で、おふたりが意識していることや心掛けていることはありますか?

小沼:前職では、案件の成果が明確に分かる環境にいました。そこからPR会社に来て感じたことは、成果が定めづらく、同じクライアントであっても、担当者によってその指標が異なることです。例え同じ結果でも、人によって受け取る印象が様々であるため、事前に意識統一ができていなければ、「期待していた成果と違う」と捉えられやすいと感じています。そのため、「そのプロジェクトにおいて、何を成果とするか」というすり合わせは、日々意識しています。

本田:それは非常に重要なポイントですね。まさに“エクスペクテーション・コントロール=期待値コントロール”です。PRの場合は不確実性が高く、常にその不確実性と向き合う必要があるので、むやみに「やります」「できます」とは言えません。とはいえ否定的になってもいけないので、さじ加減が重要です。そのバランスは、クライアントやその時の状況によっても異なるので、状況を正確に見極めるスキルが必要だと思います。状況判断力や目利き力は直感的なものでもあるため、自身の経験を積み上げていくことで身に着けられます。

小沼:まさに本田さんの嗅覚ですね。すべてのことに「イエス」とは言えないので、クライアントの要望を聞きながら、お互いの期待値をすり合わせていくことが必要だと思います。

本田:クライアントごとに目指している指標が違いますし、PRに対して求めているものがふわっとしている場合もあるので、成果の確度を上げるためにはまず、ゴールイメージの解像度を高めていきます。最初に解像度が低い状態から話し合いが始まることは仕方のないことです。「こういう場合はどちらを選びますか?」や「Aという状況とBという状況ではどちらを優先しますか?」という細かい判断を積み重ねていくことで、クライアントの思考や求めている成果が分かるようになります。

 

これからのPRパーソンに求められるスキルセット

“知識は古典、実践は最新”が理想の姿

小沼さんが今後PRパーソンとして挑戦したいことはありますか?

小沼:PRには、ヒト・モノ・カネを動かす力があると思っています。実際にPR会社で働く中で、これまで光が当っていないところを照らせたり、組織がスケールしたり等、様々な可能性を秘めていると感じています。普段指標とされるパブリシティやリーチ数等はそれぞれ重要な指標だと思いますが、既存指標に縛られず、ヒト・モノ・カネを動かすことにフォーカスして、様々なチャレンジがしたいです。

 

本田さんがこれからのPRパーソンに求めたいものはありますか?

本田:今年の春〜秋にかけて実施した「SCALE PR ACADEMY」の思いにも通じますが、PRの“体系的な教育”がもっと必要だと感じています。ここ数年で、SNSやデジタルコンテンツが一気に普及したため、PR人口が増えるよりも先に、PR領域の拡大と細分化が進みました。それにより、個人の経験値にばらつきが生まれてしまっている状況です。各自の得意分野を突き詰めることは、決して悪いことではないのですが、部分的な経験を積む前に、まずはそれぞれが総合的にPRを学ぶべきではないかと考えています。

“パブリックリレーションズ”というものをきちんと理解した上で自分の得意領域を極めていくことと、“パブリックリレーションズ”を理解せずに、特定分野を突き詰めることでは意味が異なります。そのため、少なくとも知識・理解として総合的にPRを勉強して欲しいですね。例えば、弁護士も六法全書で法律を学んだ上で実務経験を積んでいるように、“実地と勉強のバランス”が一番重要です。最近のPR業界には、優秀な人材が多く在籍しているので、知識・教養として、ジャーナリズム論やメディア論まで、幅広いアカデミック分野に精通してほしいと思います。

小沼:私自身、PR会社で働いていると、平日は特にクライアントワークに比重が傾きがちで、体系的にPRを学ぶ時間がなかなか確保できません。常に自ら学ぼうとする姿勢を持つことは大切ですね。

本田:最も理想的なのは、“知識は古典、実践は最新”という状態を作ることです。古典で学べる内容には、現代にも通ずるノウハウや手法が多く含まれています。それらの共通項を理解した上で、最新のインフルエンサー事情やSNSエグゼキューションにも精通している人こそが、強いPRパーソンだと思います。

 

プロジェクトベースで最高のチームを

さいごに、パートナー企業としてお互いにメッセージをお願いします。

小沼:本田事務所さんは、プロジェクトベースでさまざまなPRエージェンシーにお声がけくださります。また、各プロジェクでアサインされる方々は、それぞれタレント性を持たれているので、毎回新たな知見が広がります。これからも是非ご一緒にお仕事させてください。

本田:マテリアルさんは若くて勢いのあるエージェンシーなので、まだご一緒したことのない若手PRパーソンも数多く在籍していますし、これからもっと一緒にお仕事をしていきたいですね。また、個人的な思いとしては、PR業界全体としてより良い事例を作っていきたいと考えているので、フレキシブルにベストチームを組みながら、業界を代表するような成功事例を作っていきたいと思います。

本田さんがご登壇された当社イベントのレポート記事はこちら!

”1億総メディア時代”の生活者を動かすコミュニケーションとは?
SNS起点で設計するマーケティング戦略論|PR GENIC MEETING#2 レポート

 https://pr-genic.com/3032

※PR GENICの記事に飛びます。

 

 

 

※2020年12月時点の情報です。

マテリアルグループ広報 時田友里香

マテリアルグループ広報 時田友里香

マテリアル2018年入社の広報担当。好きな食べ物は羊羹。広報業務のほかMATERIAL MAGAZINEの執筆を担当しています。世の中のひとがもっともっとマテリアルグループを知って、好きになってもらえるよう日々勉強中。