取締役であると同時に、CEO青﨑にとっての恩師でもある
山村:今のからは想像がつかないと思いますが、こう見えても、大学ではまじめに哲学を専攻していました。beacon Communicationsにてアカウントエグゼクティブとしてクライアント事業を牽引後、リノベーション事業を展開する株式会社IDEE R-PROJECTを設立しました。上場を目指して奔走していましたが、リーマンショックの影響を大きく受け、夢破れてしまいました。
その後、マンションの小さな一室で、デジタルマーケティング事業をおこなう「株式会社 FILEFIX」を設立。3年後、イージスメディアとの資本提携をきっかけに、世界最大のデジタルクリエイティブネットワークである、「Isobar Japan」を創業しました。これは、人生の中でも大きな自慢です。
2015年には、総合制作プロダクションであるCandeeを設立し、40.5億円の資金調達を2023年には小学館にグループインしています。そして、今年5月にマテリアル取締役として就任しました。
―山村さんと青﨑さんの交流のきっかけは何だったのでしょうか?
山村:Candeeで取締役CEOを務めている際に、マテリアルとジョイントベンチャーを設立したことが出会いのきっかけです。当時、営業部長として担当されていたのが青﨑さんでした。そこからしばらくして、青﨑さんが代表に就任されたころには、同じ社長という立場同士、互いの悩みやビジネスのことなど、さまざまな話をする関係になったんですよね。
また、当時から、若いながらも力強い経営陣、屈強なマテリアルメンバーたちの頑張りを目の当たりにし、チームの素晴らしさをひしひしと感じていました。
青﨑:山村さんとの交流が深まったころは、経営者として右も左も分からなかった時期でした。経営の舵取りはもちろん、組織・制度の構築や営業体制など、ありとあらゆる悩みを山村さんにご相談していましたね。だからこそ、山村さんは当社の取締役であると同時に、わたしにとっては意思決定の際の重要な相談役でもあります。
すでに企業トップに立つ能力を有する人が取締役に就任することの意義
―青﨑さんからは取締役としてジョインしてほしいとオファーがあったのでしょうか?当時を振り返って感じることはありますか?
山村:当時は、わたしも同じ経営者でしたので、“社長を口説く”というのは非常に難儀なものだったんじゃないかなと。しかし、青﨑さんからは、「Candeeを卒業するなら、マテリアル一択ですよ!」と継続して熱烈なオファーをいただいていたので、可能なかぎりその想いにも応えたいと思っていました。
青﨑:そうですね。山村さんには、約2年という歳月をかけて、寝ても覚めてもマテリアルのことが頭から離れないほど、マテリアルへの参画を伝え続けていましたね(笑)。また、すでに社長として会社のトップに立つ能力とその人脈を兼ね備えている方が、取締役として会社を支えるというのは、一般的には考え難いことです。とてつもない数のオファーがある中で、マテリアルを選び、さらに取締役に就任するという決断をしてくれたことは、相当な覚悟を持っていただいたのだと思っています。
その覚悟は、今後のマテリアルグループへの期待の表れでもあるので、選んでもらえたことはわたしの自信にもつながりました。
―山村さんにそれだけ熱烈なオファーをしたのはなぜですか?
青﨑:山村さんの人間力と、経営者としてのスキル・経験に惹かれたからです。経営者は周囲からの信頼を積み上げる中で、会社のために最善の意思決定を求められるので、ときに厳しい決断も迫られます。そうした状況下においても、周囲への愛情とユーモアを兼ね備えた山村さんは、経営者として周囲をうまく巻き込んでいく。その力は凄まじいものだと思います。
また、山村さんを見ていると、いつも愛情を持ってあらゆることを決断されている方だなと感じるんです。会社やメンバーに対して深い愛情があるから、どれだけ大変な状況下でも周囲を守り切りますし、時に厳しくも寄り添い、時に自身が犠牲にもなる。だからこそ、山村さんの発言には一滴の嘘偽りもありません。経営者としての経歴からも分かるとおり、強い責任感を持っているからこそ、山村さんのすべての行動は信頼に値するものだと思っていますし、それこそが最大の魅力であると感じています。
マテリアルは、コロナ禍という未曾有の出来事にも負けない、“強い会社”だと感じた
―取締役として、マテリアルへの参画を決断した決め手を教えてください。
山村:最大の決め手は、コロナ禍という多くの企業が苦しい時期に上場を目指したことです。嵐の中の船出ともいえますよね。ただでさえ過酷な上場準備にもかかわらず、コロナ禍という未曾有の時期にもきちんと責任を果たしてやり切っている。マテリアルという会社、役員、メンバーの皆さんの圧倒的な胆力を感じましたね。事業売上など、目に見えるものに関係なく、どんなピンチにも負けない“強い会社”である証だと思います。そこに、青﨑さんからのお声がけも相まって、参画を決断することができました。
先を行く企業を超えるためにも、基礎の徹底とチャレンジを続けること
―取締役就任を経て、双方に期待することはなんですか?
青﨑:まずは、次なるステージのための新領域の開拓に期待しています。マテリアルグループが有するナレッジや資産に、山村さんが持つネットワークや事業開発の経験・スキルが加わることで、をより一層強化し、クライアント企業へより多くの価値提供ができると考えています。
山村:自分自身にプレッシャーをかける意味もありますが、青﨑さんがホールディングス経営に注力できる環境を期待しています。現在は、青﨑さんが複数社の代表を兼任している状態ですが、ビジネスの観点では注力すべき領域に重点を置くことで事業が一気に前進することが多いので、わたしはその座組を一刻も早く整えていけなければならないと思っています。
また、受託以外の事業の柱も確立させていきたいと思っています。クライアントのニーズを形にすることに加えて、マテリアルオリジナルのサービスで安定的な収益化を見込める仕組みを作り上げたいですね。
青﨑:山村さんの仰るとおり、今はわたしがマテリアルや各事業会社の意思決定に介在するケースが多いですが、今後はこうした意思決定は、山村さんをはじめとする役員に権限委譲していき、各事業が個々に成長していける環境になることが理想だと思っています。その結果、わたしがグループ経営に専念し、グループ全体の事業をスケールさせることにもつながるはずです。
―さいごに、取締役としての今後の展望を聞かせてください。
〈終〉