心理学を統計的に事業化するためにブランドを創設
ーディグラム・ラボの簡単な概要と木原さんのご経歴について教えてください。
木原:ディグラム・ラボが運営する『ディグラム診断』は、心理学と統計学を合わせた画期的な性格診断です。もともとわたしは統計の専門家として、主に広告代理店の調査関連・マーケティングを担当していましたが、クリエイティブ会社を起業した後、紆余曲折ありながらもミクシィに入社しました。
当時は、営業マネージャーとして働く中で、“枠”を売るだけではなく、なにか“新しい”ものを作らなければならなかったんです。そこで、SNSを活用した最も面白いコンテンツは何かと考え、思いついたのが「性格診断」でした。当時は多くの人がミクシィ内でも日記を書いていて、自分のことを見て欲しいとか、自分は今こんなことを考えてる、私はこう思っているという、”自分がどんな人間なのか”を知ってほしいという欲求があることを感じていました。また、ミクシィで作成していたコンテンツは、統計の専門家として見ると、良くも悪くもファジーに作っている感覚があって、なおさら、日本人の性格が一体どんな性格なのかと疑問に思い始めたところでもあったんです。
自分はマーケティング専門家でもあるので、こうした性格診断をこうした経緯がちょうど2010年くらいなので、性格診断に携わってから、あっという間に12年が経ちましたね。
ーマテリアルとの関係はいつ頃から始まりましたか?
ディグラム・ラボのマーケティングの一環として、「自分がタレントになろう」と決めてからテレビタレントとして活動していた際にお会いしたのがマテリアルさんです。初めて会ったのは、起業したての頃なので、ディグラム・ラボの設立年月日とほぼ同時ですね(笑)ディグラム・ラボは、コンセプトである「最少人数で最大の利益を出す」のために、PRが必要不可欠なんです。マテリアルが目指しているPRの概念についてはよく知っていますが、思考が非常に似ていると思います。物語で世の中に語ることや、コンテンツを立体的に捉えること、単なるテレビ露出で終わりではなく、ブランドの成長に貢献させることなど、この辺りが両社ともリンクしていて、それぞれが異なる山の登り方をしていても、同じ山を登っている感覚があります。
PRもデータもナマモノだからこそ、調理してその場で出すことに意味がある
ーそれぞれの視点から、両社が組んだらどう面白くなると思いますか?
竹中:ディグラム・ラボとして木原さんは、全てを可視化することができます。よくある調査PRは、調査から定量的に分かりやすいパーセンテージや数字のファクトを出して、それをニュースとして露出させるというやり方です。しかし、そこにディグラム・ラボを挟むことで、そのファクトのさらに奥にある「この属性の人たちに多いのがこのような性格」「こう考える人は、実は裏でこういうことも考えている」さらに、「こういう性格の人が好きなものは〇〇という傾向が高い」などの、性格からその人たちが行動に移し出すシナリオをしっかり把握することができます。そこが、ディグラムラボと組む強みだと思います。
木原:ディグラムラボが行っていることは、その人が気付いていない“人となり”を統計データで見せることだと思っています。例えば、良いドラマと言われる作品は、演技に出てこない登場人物の裏設定があったりします。そうした裏側までを統計データで見せているのが、ディグラム・ラボです。だから、マテリアルが行っているような、PRを立体的にするための下支えや黒子にもなれる。例えば、「冷たい人がいるけど、実は昔こういう経験があったから冷たい人になっている」とか、「温かくて優しい人だけど、こういう経験があったから優しくなった」というような理由付けができます。という言葉があるように、ファクトをベースにしてその人のアクト(行動)を探す。アクティベーションの糸口を探ることがディグラム・ラボの得意技です。だからこそ、マテリアルと組むことで、それを外にどう見せるのか、どう発展的な未来に繋いでいくのかという物語の設計図を書くことができるんだと思います。先ほどお話した思考が似ているというのはこういうことですね。
竹中:そう言えば、木原さんが一時期『ディグラム合コン』という合コンをしていました(笑)これは調査の一環で、それぞれ女性陣と男性陣の波形をみて、この波形の女性はこの波形の男性と上手くいく可能性が高いという分析から、多くのカップルが成立していましたよね(笑)
木原:一時期、めちゃくちゃ依頼を受けたのが結婚式の催し物ばかりでした(笑)実はこれは、仕事に共通しているんです。結果的に自社の商品やブランドが今後どうなっていくのか、この先どうすればいいのかと悩んでいる人も多くいらっしゃいますが、データで見るとこうした方が良いですとか、定量的かつ定性的にブランドの持つ性格判断ができます。例えば、台形型1という結果の性格が出ていたとしても、環境や状況次第で結果は変わっていくんです。その環境で人が変わるということを匂いで感じられるかどうかが非常に重要です。PRやデータは“ナマモノ”だからこそ、すぐに調理してその場で出さないと意味がない。そこの感覚や嗅覚が同じため、マテリアルとは料理を作る時の速度が一緒なんです。与えられた素材の中で何ができるのかという瞬間芸は、同じベクトルを向いています。
世の中の情勢に合わせて変化しなければ淘汰される
竹中:木原さんは、恋愛や仕事など、様々な場面で心理学と統計学を組み合わせた最適な場の提供をされてきましたが、得意とするカテゴリの中で、何が最もマッチしましたか?
木原:場の空気を読むコミュニケーション全般ですね。例えば、直近の話でいうと、DX化の風に乗ったセールスが得意です。これまでは性格を見える化するプロモーションやブランディングとしての性格診断が多かったのですが、コロナ禍が要因にもなり、DX化を目指すセールスコミュニケーションの傾向が強まりました。これまで、テレビタレント、性格診断のプロときて、今はシステム屋になっています。DXの波に乗ったコミュニケーションシステムの開発屋として、この2年間程で事業レイヤーが変化してきました。
マテリアルの歴史も面白いと思っています。露出獲得に強いPRエージェンシーから発展して、今はストーリーテリングを基軸としたブランディングが得意なように、他社との協業や資本提携など様々な方向に挑戦しています。ディグラム・ラボも、統計やリサーチの専門家ではありつつも、留まっていては必ず淘汰されるので、常に新しいことに挑戦したいという思いがあります。この10年の間にも、震災があって、アベノミクスがあって、コロナがあって、というように世の中の情勢や環境が激変しているわけです。となると、会社としてのコアは変わらないけど、やってることは変わらなければいけない。それは今後も変わると思うし、こうした姿勢は持ち続けたいと思っています。マテリアルはマテリアルで非常に良い舵の切り方していると思いますね。いつもセンスいいなぁと思いながら見ています。
それぞれに人に合う脚本を明示しなければ、誰にも刺さらないマーケティング施策になる
ーディグラム診断とマテリアルが提唱するトライブマーケティングを掛け合わせることで、企業やブランドにとってどのようなメリットがあると思われますか?
木原:これからの時代は、当たらない広告やマーケティング施策が増えていくと思っています。平成中後期までは、の20%程度の割合で存在している、“物事に意欲的に取り組む層”をターゲットとしたコミュニケーションを、残りの80%である“受動的で積極性がない層”の生活者に出しても通用していましたが、これまで通りの正攻法では全く通用しなくなります。誰に対して、誰がハッピーになるのかという文脈作りが肝になると思います。そうしないと、結果的に人を不幸にするかもしれないですし、誰に向けての施策なのかよりを明確化しなければ、生活者には刺さらないと思います。
竹中:なるほど。マテリアルが提唱している「トライブマーケティング」も、現在のような「1億総自由社会」や「1億総メディア時代」の中では、デモグラやペルソナだけではターゲティングできないことを前提に思考されています。世の中のポテンシャル層や潜在層をより明確に把握して、その人たちを確実に巻き込むための施策やマーケティングプランを行いながら、ブランドやサービスの成長にまで紐づけていきたいと思っています。コンバージョン率を高めるという意味でも、どのような価値観を持つ人がどのような事柄に興味関心を示すのかが全て分かっているディグラム・ラボは私たちの活動に非常に寄与すると思っています。
木原:重要なのは、こうしたプロファイリングをきちんと凌駕する意思、つまり、クリエイティブと言う名の意思だと思っています。それこそマテリアルが提唱している「トライブマーケティング」は何かしらの意思を持たせていますが、ものすごく圧倒的な専門性を持って当てていきながら、馬鹿なフリをするということが大事だと思いますね。
次の境地では、あなたこうですよねと言い当てるだけでだけではなく、手を引いてあなたはこうなるべきですまでを具体的に明示する必要があります。要するに、その人に合う脚本を明確に書いて伝えてあげるんです。ただこれは、これはデータだけでは出せない部分であり、マクロ視点や環境など様々な地点から見た結果作るものなので、平準化はできない。だからこそ、トライブマーケティングにも通底しますが、重要なクロージングの言葉をワンコピーで作った上で、どの層が見ても感動するクリエイティブを見せていかなければいけないんです。
PR会社の枠を超えた課題解決会社として
ーさいごに、双方に期待することを教えていただけますか?
木原:今後のディグラム・ラボは、発信力を強めていきたいと思っているので、マテリアルにはそこを期待しています。
竹中:そうですね。マテリアルが持つチャネルもテレビだけではなく、YouTubeやSNSなどコンテンツの領域もかなり広がったと思っています。マテリアル単体でもそうですし、フリップデスクやルームズのようなグループ企業の提供ソリューションにおいても、ディグラム・ラボのサイコグラフィックと組み合わせていけそうですよね。
木原:非常に面白そうですね。マテリアルもかなり大きくなりましたし、もはやPR会社ではなく課題解決会社だと個人的には思っています。山の登り方は違えど、ディグラム・ラボと似ていますし、非常にいい会社だなと思います!